人生2回目の定例議会が終わりました。
議場での丁寧かつ俊敏な意見交換は、相変わらず頭が混乱します。直接的な表現がもっとできれば楽なのでしょうが…。
今回の一般質問は、初回の環境行政に関する様々なテーマを取り上げるのではなく、ビオトープと企業版ふるさと納税に絞った内容にしました。
初めて討論でも発言をしましたが、無会派のため予算を覆す数の力はありません。しかし、私の発言によって(表には出てこないけれども)なるほどと思ってくださる職員の方は徐々に増えてきているように感じました。
大きな組織ですから急には変えられませんが、今は焦らずにとにかくたくさんの種をまくときだと思います。
質疑の概要を箇条書きでご紹介します。
①市が管理するビオトープの現状は?
②市民団体とビオトープの連携をしてはどうか
③企業版振るふるさと納税を募ってビオトープを管理してはどうか
④企業版ふるさと納税の収支はどうか
⑤どのような部局のビオトープなら実現性が高いか
⑥社会教育施設にも企業版ふるさと納税を適用可能か
⑦生息環境の再生のため海の浅瀬を増やしてはどうか
⑧議案第108号 令和5年度横須賀市一般会計補正予算第5号について、反対の立場から討論
①市が管理するビオトープの現状は?
天白質問:
横須賀の自然環境は都市開発により急速に失われ、昭和60年代以降樹林地率は30%台とほぼ横ばいとなっているものの、社会は無限に自然の消失を許したわけではなく、保全区域を設定したりビオトープを創ったりと対策を講じてきた。前回の一般質問では、上地市長より「生物多様性を回復させる取り組みをさらに進めていきたい。自然環境は横須賀の財産、恵まれた自然環境が身近にあることは、横須賀の大きな魅力であり、将来の世代に引き継いでいかなければならない。民間企業等と連携して30by30を達成する」との熱いご答弁お聞かせいただき、大変頼もしく感じた。学校ビオトープ以外の市が管理するビオトープ(轡堰、関根川、野比自然池、衣笠山)の現在の管理状況、特に当初目標としていた自然環境が保全できているか、今後の生物多様性の回復に対する課題は?
市長回答:
長井の轡堰については、除草や清掃等の管理のほか、職員が付近に行った際に現場の状況を確認し、必要に応じて川からの注水を行っている。特段のモニタリングは行っていない。
関根川の調整池については、他の河川と同様に、除草や清掃等の通常の管理を行っている。ビオトープの管理としては、時間の経過により、そこに生息する生物も次第に回復すると考えていたので、生物多様性を意識してこなかった。
衣笠山公園内ホタルの里については、指定管理者によりホタルの生息環境に配慮した管理を行っている。市民団体によりホタルの発生数のカウントを行うなどモニタリングを実施しており、一定の生物多様性の確保ができているのではないか。
上下水道局長回答:
上下水道局が所管している野比第一、第二自然池は、公共下水道敷として維持管理を行っている。生物多様性ということを意識していなかった。
②市民団体とビオトープの連携をしてはどうか
天白質問:
ビオトープ設備の老朽化や外来生物の侵入などの問題があるのではと思うが、生物多様性を気にかけて日々管理されているのか?担当者がどのようなことに日々気をつければよいかなどの知見が不足しているのではないか?ビオトープ管理のノウハウを補うことができる部署として、本市には自然・人文博物館の学芸員という大変優秀な専門家集団がおり、自然系の市民活動団体も34団体以上存在するが、ビオトープ管理を連携して行ってはどうか?
市長上下水道局長回答:
市民活動団体との連携については、各施設の管理状況が様々であるために、まずは、団体の皆さんから御意見を伺うことから始め、どのような連携ができるか検討していきたい。
天白質問:
基本的には、市民団体との連携については、団体からの意見をまず伺った上でということだが、現状、高齢化だとかマンパワーの問題から、直ちに団体側から行いたいということを申入れできる状況にはないところが多いのではないか。ただ待ち望んでいるだけで改善される問題ではないのではないか。
自然環境団体が今以上の力をつけられるようにアシストしたうえで連携を促すべきではないか。
建設部長回答:
自然環境の保全に対する取組は、二、三年で終わるのではなく、かなり長期間、継続的に続けることが必要だ。 継続的に続けるものを環境団体の方々にボランティアで長年お願いするというのは、これは無理があるのかなというのは我々も感じているところ。御指摘になったような民間資金の活用によるような仕組み、これが長年続くような仕組みづくりを関係部局の中で少し考えていくことが必要なのかなと今感じている。
③企業版振るふるさと納税を募ってビオトープを管理してはどうか
天白質問:
本市はDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組みを積極的に行っているところだが、世界ではこれと同時にネイチャーベイストトランスフォーメーション:NXに向かっても大きく動いている。民間企業においても環境への貢献が社会要請として存在し、これはグローバル企業であればあるほど避けて通れない。一方、利益を追求するために経営面では節税を含めあらゆるコスト削減に迫られる。企業が環境活動を活発化させることが、経営面で足かせにならないような配慮を行政は考える必要があるが、各部局が管理する既存のビオトープについて、民間企業が経済面で生物多様性保全に直接貢献し、それぞれの環境報告書への掲載等企業価値を高めていただけるような戦略として、企業版ふるさと納税を募ることはできるか。
市長上下水道局長回答:
今後ますます自然環境に対する企業からの関心が高まり、ビオトープを含めた自然環境の保全などに貢献したいという企業からの支援が増えていくと思う。現在でも、横須賀市民間連携推進ウェブサイトを立ち上げ、様々なジャンルの施策について企業版ふるさと納税を募集しているが、自然環境の保全に関心のある企業とこれまで以上に連携が図れるよう、広報のPRを努めてまいりたい。
④企業版ふるさと納税の収支はどうか
天白質問:
個人向けふるさと納税では、本市への寄付額と他市宛てになされた寄付による控除額の収支は例年数億円の赤字と伺っているが、企業版ふるさと納税における本市への寄付額と他市宛てになされた寄付による控除額の収支についてはどうか?
市長回答:
横須賀市の企業版ふるさと納税について、過去3年間いずれも寄附額が控除額を上回っている。令和2年度は、企業からの寄附金が3,000万円に対して、税控除額が約24万円で約2,970万円のプラス、令和3年度は、寄附金が7,100万円に対し、税控除額が約380万円で約6,700万円のプラス、令和4年度は、寄附金が約1億3,300万円に対し、税の控除額が約290万円で収支は約1億3,000万円のプラス。
天白質問:
従前、横須賀でもっと環境政策に注力しましょうよと各部局に要望をすると、テンプレートのようにノウハウがない、マンパワーがない、予算がないという回答をいただくことへの対応として今回その3要素をセットで質問させていただいた。知見については博物館、労力については市民団体、資金については企業版ふるさと納税を活用すればこの仕掛けが動く。
本市の立てつけとしては、企業の意向に沿ってあらゆる事業が既に企業版ふるさと納税に適用可能であるということだが、寄附を募るというのは要は見せ方、プレゼンテーションなのではと思う。実際の寄附企業の入り口としては、内閣府のポータルサイトなのか、市のホームページからなのか、あるいはトップセールスなどの個別アプローチなのか、どれが実際ウエートが大きいのか。
財務部長回答:
企業版ふるさと納税を募るホームページで比較的集客であったりとか、イベントのようなコンテンツの御紹介をしている。このほか、文化スポーツ観光部がイベントを行う際には各企業に営業に回っている。今後こういったチャンネルを少し増やしながら対応していく。
⑤どのような部局のビオトープなら実現性が高いか
天白質問:
企業版ふるさと納税を環境保全事業で募集の際は、NXやネイチャーポジティブの社会の実現に自社がどのような形で貢献できるのか、例えばOECMへの新規申請や絶滅危惧種の保護など具体的にどのような生態系保全に貢献でき、それが企業とどのような関係があるのかをわかりやすく事業別にアピールする必要があると考える。まとまった寄付収入を得られれば、市内の市民活動団体にもインセンティブを発生させることができ、活動者の高齢化に歯止めがかかるのではと期待している。多数の部局や予算背景が関係していると思うが、どのような部局のビオトープであれば企業版ふるさと納税を有意義に活用できる可能性があるか。
市長回答:
基本的には、寄附してくださる企業の意向に沿っていれば、どのビオトープでも可能性がある。先ほど申し上げたとおり、まずはこのような自然環境保全の施策に御寄附をいただけるよう、これまで以上に広報、PRに努めていく。
天白質問:
企業側の立場に立てば、法人関連税というのは収益に応じて当然毎年支払わなければならない経費なわけで、一方で、環境への貢献についても環境報告書等に掲載する必要があるので、社会から認められるためにはほぼ義務的に支出しなければならない経費とも言える。一方で、両者は、企業の側に立てば、支払った額に応じて企業の収入が増えるということはない、本音を言えば企業としてはどちらもなるべくスリムにしておきたい経費なのではないか。企業版ふるさと納税で、もし環境政策事業を募集するとなると、この2つの支出を一本化することができる手法になり得るのではないか。
本市の企業版ふるさと納税は、イベントのスポンサー企業的な出資をしていただきやすいように想定されていた。もしこれを環境政策で募集すれば、企業によっては、例年CSR活動費と相殺すればむしろ持ち出し額がマイナスになる、つまり企業側の収益が増えるというパターンもあるのではないか。
企業の経営面の立場に立って、ただ面白い企画だけを出すのではなくて、実際に経営判断として横須賀市に飛びつきたいというような戦略も含めて打ち出していっては。
財務部長回答:
御提案のように進めていきたい。
⑥社会教育施設にも企業版ふるさと納税を適用可能か
天白質問:
社会的に重要な施策でありながら長年予算が付きにくい状況が続いている事業として、教育委員会所管の自然・人文博物館リニューアル事業と、老朽化が著しく立ち入り禁止状態が続いている万代会館の再整備があげられる。これらの社会教育施設の活性化にむけた財源としても、企業版ふるさと納税を募り、より充実した整備を行うことについてはいかがか。
教育長回答:
博物館の再整備や万代会館の保存については、現在鋭意検討を進めているところ。社会教育施設の再整備には多額の経費がかかることが想定されており、市税等の一般財源で全てを賄うことはできず、国庫補助金等の特定財源の確保が必要となり、御提案にある企業版ふるさと納税による資金調達を含めて、様々な財源について研究をしていく。
天白質問:
これまでの環境政策を拝見していると、非常に緻密な予算計画の下、いつも堅実に事業を組み立てて実践されておられ、市民生活に影響度の高い事業から優先的に遂行されている。一方で、企業版ふるさと納税を通して寄附に事業を頼るというのは、当然企業経営の状況によって変動があるので、安定的な財源とはなかなか言い難い面もある。
そこで、公共事業がそこに思い切りかじを切るというのは望ましくないとの考え方もある。しかし、環境政策に限っては堅実に事業化することができなかった案件というのが非常に多く、生物多様性への対応については、市民生活への直接の影響が分かりにくいということから、後回しにされている状況がほとんど。
本市に長くお住まいの方、市長を含め幼少期の思い出として、この地域ではトノサマガエルと呼ばれていたトウキョウダルマガエルがいた、そんな御記憶があるか。実はトノサマガエル、横須賀から人知れず絶滅したのは今から30年以上前。そのことで生活に困る市民は確かに皆無。しかし、今後どんなに環境政策を頑張っても、一度絶滅した生物は二度とよみがえらない。
世界132か国の政府が参加している生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームでは、人類の活動によって約100万種の動植物が今、絶滅危惧にさらされていると警告している。これまで私たちは、生態系サービスを原資とした上でこの文明を築き上げてきた。わらしべ長者のように、今身近にある自然を大切にしていれば、巡り巡って私たちの幸福につながる。確かに、本市で生物多様性の保全対策を進めて、直ちに予算化するのは困難だが、緊急的に生物の命を次の時代に取りあえずつなげていく作業も必要だと思う。
今回お話しさせていただいた企業版ふるさと納税も含め、言葉は悪いですけれども、寄せ集めの事業でも、あるいは成功確率が低くても、多少格好悪くても構わないから、とにかくいろいろ行ってみる。その必要性をぜひ市長に感じていただきたいと思う。
市長回答:
先ほどから聞かせていただいて、非常に勉強になる。行政というのは、福祉、経済、最近ではゼロカーボンという流れの中で、生物多様性というのは多分後回しにされてきたということがあると思う。
人間が生きていく上で、生物と一緒に共に生きてきたという歴史を追うならば、大きな意味で自然環境というのは対処しなくてはいけない。今まさにそれを掲げてリニューアルしながら施策をぜひ進めていきたい。
天白質問:
御理解いただけて非常にうれしく思う。今回、ビオトープという側面から本市のNXについて議論させていただいたが、本当にいろいろな部局が関係しているということを改めて確認することができた。
一昨年までは環境政策部というのがあって、ここが旗振り役として政策を進めてきたわけで、部がなくなってしまって環境政策に混乱を生じるとか、環境政策が下火になったのではないかという考えもあろう。
一方で、どこかの部署にお任せするのではなく、上下水道局も、教育委員会も、財務部はじめ全ての部局が生物多様性を市長がおっしゃっていただいたように後回しにせずに、おろそかにしてしまっては自分たちのまちの未来はないのだという使命感をそれぞれ持って、これからはNXに取り組んでいただけるようになった。環境政策部がなくなったことで、私はそのような意識改革があってほしいなと思う。
もしそうであるならば、NXの最大の旗振り役は、もちろん市長だ。決して環境問題に特化して貴重なお時間を使っていただく必要はないが、NXを進めやすい組織を目指して、今後ともリーダーシップを発揮していただきたい。
本市の自然環境は、フィールドにも、人にも、そして知識にも恵まれている。残念ながら山積する課題にも事欠かないという状況。しかし、これまでそれぞれを十分にリンクできておらず、宝の持ち腐れであった。
私は、横須賀の生態系という名の飛行機を墜落させてしまうのではなく、何とかせめて不時着くらいにできるように、これからも全力を尽くしていきたい。市長は、市役所を動かすことで、不時着ではなく再びその飛行機が上昇できるように、ネイチャーポジティブに向けたメッセージを最後にお伺いしたい。
市長回答:
トノサマガエルがいなくなったというのは初めて聞いて、不勉強だなと思った。生物多様性というのは、多分根源的に言えば、人類史をどう捉えるかという哲学的な問題まで発展してくる。もともとそういう問題だと思っているので、ぜひ、これから日本の、人間の社会を継続的にするためには、多分生物多様性は不可欠であろうと思うので、ぜひ旗振り役で頑張っていきたい。
(環境教育常任委員会)
⑦生息環境の再生のため海の浅瀬を増やしてはどうか
天白質問:
米海軍横須賀基地の桟橋新設について、建設予定地は自然の砂浜が広がっていたり、海鳥の冬の越冬地になる浅瀬がある場所である。砂浜の消失や藻場の消失といった影響はないか? 日本側は米軍の基地整備について制限する立場ではないにせよ、今回の造成工事に対するミティゲーション(代償措置)として今回の残土を利用して近隣に浅場造成することを求めるべきではないか。
市長室回答:
議員からのご意見があったこと国に伝えたい。
(討論)
⑧議案第108号 令和5年度横須賀市一般会計補正予算第5号について、反対の立場から討論
天白発言:
このたびの補正の趣旨は、令和5年9月8日の台風13号に伴う、最大時間雨量40mmの豪雨を受け、現在施工中である「津久井5丁目地内水路整備工事」内にて大規模な土砂崩落が発生したことにたいし、崩落土砂の撤去、並びに仮設土留め工に要する費用を補正予算の理由とされている。
現地をよく知る者として当該川岸の表面は、いわゆる土ではなく、家庭ゴミや農業ゴミが積まれており、非常に流動的だった。かつて水田の上に客土をして造成された場所のため、通常の土壌に比べ地盤の保持力、保水力は著しく低い。
今回土壌崩落の理由として市が考えている最大時間雨量40mmの豪雨がなくとも、盛り土面に多くのゴミが積まれている場合、掘削により早晩崩落することは想像に難くなく、あらかじめ崩落予防措置をしておくべきだった。この小川で、4000万円という大型予算を要する追加工事が必要な事態にしてしまったことについて、私は市が工事計画を慎重に見極めるべき責務を果たせていないと考え、反対する。
この4000万円の予算を、もっとほかに有効活用できたはずだ。今後、このような事態が再び起きることがないよう、緊張感を持って事業を進めていただきたい。