2023年6月定例議会

この定例議会が私の初舞台となりました。
いろいろ聞きたいことは盛りだくさんですが、それらを一括で聞いて回答をいただいたあとに、個別の意見交換をするというスタイルが、普通の会話のやり方と違いすぎて脳がうまくついて行かない感じがしました。
意表をつくような返しができなかったので、執行部としては想定通りの問答だったのかなと思います。
ただ、これまで市民として感じていたような、環境政策にまったく無頓着な行政の姿勢は転換できる兆しが見えた気がしました。

質疑の概要を箇条書きでご紹介します。

①横須賀でネイチャーポジティブしよう
②横須賀のOECM(自然共生サイト)を増やそう
③市内の学校で環境学習を盛り上げよう
④博物館を再生しよう
⑤緑を切り崩して作るメガソーラーはもういい加減にしよう

①横須賀でネイチャーポジティブしよう

天白質問:
本市におけるこれまでの自然環境施策は、もっぱら失われゆくみどりや生物への対症療法的な対応だったが、それでは地域はこの先も常に自然環境を喪失し続ける流れとなる。国連生物多様性条約第15回締約国会議COP15では、この現状を打破するために、「遅くとも2030年までに生物多様性の損失を逆転させ回復させる」こと、「ネイチャーポジティブ」が発表された。本市としてこれにどのように対応していく方針であるか。

市長回答:
本市ではネイチャーポジティブに対応する具体的な取組として、平成25年度から長坂緑地、平成27年度から野比のかがみ田緑地において里山的環境保全・活用事業を継続している。特に長坂緑地の民官連携里山エリアについては、今年度から公募によって決定された民間の7つのグループ、10団体により活動を拡大している。今後も生物の多様性を回復させる取組をさらに進めていきたい

②横須賀のOECM(自然共生サイト)を増やそう

天白質問:
このCOP15では、具体的に23の行動指針が示された。日本を含むG7各国は、ネイチャーポジティブを実現させるため、30by30とよばれる「2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全すること」を約束しており、これを受けて環境省はOECM(Other Effective area based Conservation Measures)-既存の自然保護地域に寄らない自然共生サイトを認定する取り組みを昨年度から試行、本年度から本運用されている。本制度によって、自然保護を活動目的に掲げる環境省や自然保護団体以外の、例えば、河川、海、林業、農業、都市や企業所有の緑地を管理する関係者が、OECMという制度を通じて生物多様性保全に主体的に取り組む機会ができた。本市は昨年度OECMにいち早く手を挙げ、神奈川県初の認定相当地とされた。市民の利益に直結する生態系サービスを持続的に保全するため、引き続き民官が連携して自然共生サイト登録地を増加させることの重要性について市長のお考えをお聞かせいただきたい。

市長回答:
YOKOSUKAビジョン2030の環境分野の基本構想として示したとおり、自然環境は横須賀の財産である。恵まれた自然環境が身近にあることは横須賀の大きな魅力であり、将来の世代に引き継いでいかなければならない。
そのような考えの下、自然環境の保全、創出に取り組んでいく一つの具体的なアクションとして本市がOECMの先駆けとなることを決断した。また、30by30を達成するためには市のみではなく、民間企業等と連携して自然共生サイト登録地を増加させることが重要である。まずは民間企業等へこのような制度があることを周知していきたい。

天白質問:
民官連携について、本市にはゼネコン等、民間企業が所有する緑地が多い。民間へのアプローチや周知は、具体的にどのような形で行っていくつもりか。

建設部長回答:
本市の中で既にそういう指定に合致するような場所がある場合には、本市のほうからそういった企業に直接的に働きかけることも考えていきたい。

天白質問:
30by30は陸域だけではなくて海域、海のことも含まれる。海域の30by30も今後考慮していただけるか。

建設部長回答:
海域も大切だと思っており、今後その辺につきましては研究を重ねていきたい。

③市内の学校で環境学習を盛り上げよう

天白質問:
地域の自然環境を大切にする市民意識の醸成に寄与する環境学習の活性化について、本市には、現在46校の小学校があり、それぞれの学区では特異的な自然環境を呈している。子どもたちが自らの地域の自然環境について知り、自分ごととして環境を守り育んでいけるような学校教育プログラムを展開・拡充することは重要であると考えるが、教育長のお考えをお聞かせいただきたい。

教育長回答:
将来を担う子どもたちに対する本市の豊かな自然環境を活用した教育は大変重要な意義を有している。小学校学習指導要領では、地域の実態等に応じて教科横断的、総合的な学習を行うことや体験活動の充実、地域教材の開発、活用などが求められている。これらを踏まえて、現在市内では主に小学校3年生から6年生において地域の特性に応じて身近な自然を体験し、地域の自然環境を考える取組や生活の中からSDGsを考える取組、学校全体で地域の自然から環境問題を考える取組などを全ての小学校で展開している。

天白質問:
地域の自然環境について濃密な伝承文化は薄れつつある今、学校教育、社会教育で補っていくべきだ。学校独自の環境学習を補完するように環境部、建設部等が希望する一部のクラスを対象に環境学習プログラムを提供しているが、その恩恵を受けるクラスは残念ながら市内のごく一部にとどまっている。今後は教育委員会と市長部局がさらに連携をして、教職員の皆様の負担軽減と子どもたちが濃密な学習の機会を等しく得られるようにすべきだ。

教育長回答:
小学生が移動する授業だとすると、自然のない学校は2時間、3時間かけて移動するということができないというこの地理的な問題が課題。

天白質問:
それぞれの小学校区それぞれに違った自然環境があって、東側、あるいは横須賀市中心部の小学校には自然環境がないということでは決してないと思う。教育長が市長部局等とも連携をしていきたいということだが、市長はいかがか。

市長回答:
連携してできる限り保全には努めていきたい。子どもたちに対しても一緒になって連携して、関係部局とともに運動していきたい。

天白質問:
予算その他大人の事情で環境学習を二転三転させてしまうのではなく、教職員の人材不足、教育予算の不足についてはそれぞれの部局で知恵を出し合って、みんなのまちで協力して補っていくというのが部局同士連携をするということなのではないかなというふうに思う。
横須賀市では決して突然打ち切るというようなことがないように御配慮いただきたいですが、こういう活動を息を長く継続、あるいは発展させる方針についてお考えがあるか。

教育長回答:
46校の46人の講師が同じ時期にどうしても必要になってしまうという学校数の多寡によって講師の必要性が変わってきてしまう。これをいかに調整できるかというのは学校間でやってもらっていかなければいけない。

④博物館を再生しよう

天白質問:
自然人文博物館は、入館無料を堅持し、馬堀自然教育園、天神島臨海自然教育園、ヴェルニー記念館の3つのサテライトを有する全国で最大の施設数を誇る博物館となっている。にもかかわらず、常設展示の更新やユニバーサルデザインの導入など時代の変化に応じたリニューアルに関する予算措置がされているようには思えない。全国に誇れるはずの自然人文博物館の活性化することは、各学校における居住地域の自然環境を学習する機会の提供とともに、横須賀ビジョン2030の環境分野を実現するうえで極めて重要であると思うが、教育長のお考えをお聞かせいただきたい。

教育長回答:
横須賀市自然・人文博物館は昭和45年に現在の場所、深田台に自然部門が独立して自然博物館として開館し、昭和58年に人文館を増築したときに現在の横須賀市自然・人文博物館となった。
このような成り立ちから自然部門、人文部門が独立した形で今日まで来ているため、横須賀を知り得る総合博物館として捉えたときには、自然館と人文館の融合をどのようにしていくかということが大きな課題である。博物館に行けば横須賀の豊かな自然や様々な歴史を感じ、横須賀のことがよく分かり、横須賀のことをさらに好きになる。そんな施設にしていきたい
また、リニューアルを行うに当たり自然・人文博物館だけでなく馬堀自然教育園、天神島臨海自然教育園などのサテライト施設の在り方についても一体で検討する。

天白質問:
人材育成の一翼を担ってきたのが横須賀市自然・人文博物館だ。
一方で近年は特別展示等のイベントを除けば来館者でにぎわっているようにはあまり見えない。せっかくある博物館や3つのサテライト、そして博物館を取り巻く専門家、あるいは専門団体等の資源が潜在的には非常に豊かな横須賀という優位性をぜひ生かしていただき、さらにそれを伸ばしていくことが地域に根差す人々をしっかりと支え、にぎわいや活気を取り戻でるのではないか。

教育長回答:
長い歴史の中で大変有名な研究員の方たちが独自の研究をされてきたということはございますが、それぞれが体系的に連携的というのでしょうか、連動的に動いてこなかったというのも一つある。研究業務をないがしろにするということのないように進めていくべきだと思っている。

天白質問:
日本の博物館学芸員は欧米の博物館学芸員と少し違うのは、学芸員がカバーしている分野というのが日本の場合、非常に広くなってしまっており、ほとんど1人で雑務も含めてやらないといけないというところだ。
リニューアルについて、横須賀市教育振興基本計画では事業83に自然・人文博物館のリニューアルの検討事業というのがあるが、今年度の当初予算では予算化をされた形跡が読み取れない。他市の博物館を見ると、近年次々にリニューアルをされて新しい体験型の展示手法等が取り入れられバリアフリーの改修もされているが、横須賀市自然・人文博物館のリニューアルについて進行管理はどのようになっているか。

教育長回答:
今内部でどのような形が一番いいのか、研究施設として存在すればいいのではなく、にぎわいづくり、市民の方たちにいかに来てもらえるかということを考えていかなければならないとすると、展示内容をどのように回遊性を持ち、より効果的にやっていくかというイメージ戦略から入っていかなければいけない。そのために今基本的なリニューアルの構想というのでしょうか、それを学芸員を含めた中でつくり上げていこうとしているところだ。それが現在の建物の中だけで済むのか、今の建物自身を増改築しなければいけないのかというところがまだ確定できていない。

天白質問:
基本構想が今年度にはできるという理解でよいか。

教育長回答:
できる限り早急につくりたいと思っている。

⑤緑を切り崩して作るメガソーラーはもういい加減にしよう

天白質問:
樹林地を大々的に切り崩すことで作られる太陽光発電施設については、自然環境にやさしいエネルギーとは言い難いばかりか、ゼロカーボンアクションプランを阻害する事業であることは明らか。そのような太陽光発電施設までも、再生可能エネルギーとして優遇されるのは本来の制度趣旨とは反するのではないか。こうした施設が散見されることについて、市長の率直なご感想を伺いたい。

市長回答:
率直に申し上げますと、私も豊かな自然環境は横須賀にとって大きな魅力の一つだと考えているので、太陽光発電施設の設置はできる限り自然環境を損なうことなく進めることが望ましいと思っている。ただ、現状法に基づき適正な手続を踏んで行われていることについて、行政としてはそれを受け止めなければならないとも思う。一定規模を超える施設を導入する際には緑被率や土砂災害、また景観への影響などの検討が必要だと考えている。

天白質問:
再生可能エネルギー施設整備に伴う自然環境の消失と、実際に発生する電力を総合的に判断し、吸収源の消失など、自然環境に対する弊害が著しい事業については、FIT・固定価格買取制度の認定をしないことや、中小企業経営強化税制や固定資産税の特例措置等の各種支援施策の対象外とするなどの制度改革を国に求めるべきと考えるが、市長のお考えをお聞かせいただきたい。

市長回答:
現在国では太陽光発電施設の設置に関して自然災害発生の懸念、景観、自然保護などの観点から、開発の面積要件や出力要件における規制を強めるなど、開発がより適正に行われるよう法改正を進めているところだ。こうした状況から税制優遇を対象外にするなど、御指摘のような制度改革を国に求めることは今のところ考えていない。

天白質問:
横須賀市景観条例、景観計画においては現状確かに届出が必要な事業ではないのかもしれないが、その理念や市民及び事業者の責務ということには必ずしも合致していないように思う。地球環境は我々の共通の財産であり、民間事業だからといって全てを尊重するということは現実的ではなく、そのために各種規制があると思う。こうした緑地を大きく損なって建設される太陽光発電施設というのは、旧来的な開発行為と何ら変わりなく、地球温暖化防止対策に効果がないばかりか横須賀の生態系を損ない、地滑りの誘発など、防災面でも懸念がある
本市においては、私の知る限り4か所の太陽光発電施設が土砂災害警戒区域に隣接をしている。緑を崩して作る太陽光発電施設はカーボンニュートラルに矛盾するだけでなく、防災上の観点からも市民の命を預かっているという点では、今後は宅地並みに安全上の視点を入れるべきだ。

経営企画部長回答:
アクションプランにも自然環境の保全ということがうたわれている。
しかし、例えば太陽光発電設備を市が規制する場合には、条例を制定しまして設置禁止区域を指定することなどが考えられるが、私有財産に制限を加えることになり、慎重に考えていかなければならない。
国が行うの規制検討状況や他都市の事例も含めて今後そうした動向も踏まえながら考えていく。

天白回答:
確かに、今すぐに制度改革をするということは本市独自の力だけでは困難かもしれないが、2050年というのは遠い未来のように感じる一方、その筋道は今つくっておかなければその構想はなし得ない。将来の世代に禍根を残さないために、植生を破壊して建設される太陽光発電施設など、ゼロカーボンシティアクションプランに矛盾した事業については、大胆に規制していく決断も一部では必要ではないか。

経営企画部長回答:
私権の制限と国の動向等も踏まえ考えていく。

市長回答:
天白議員の言うことはよく分かっているつもり。理想は理想としてそこに突き進んでいきたいが、現状も踏まえて一つ一つクリアしてかなければいけない。目標とするところは同じであるということだけは御理解をいただければ。

天白まとめ:
理想に向けて一つ一つクリアしていくということ、ぜひ私も力添えさせていただきたい。


横須賀市 議会議会中継(アーカイブ)
令和5年6月定例議会 ー 06月07日 本会議 天白牧夫 一般質問(一問一答)